チェルシーは現代フットボールの岐路に立っているのか、或いは1970年代の再来か。
記念すべき和訳記事第一弾。
チェルシーファン団体「Chelsea Supporters Trust」前代表で、60年代のチェルシーについての書籍も出版している古参ファン、Tim Rolls氏による現在のチェルシーについての考察。
大分ディープな話題ので、お覚悟を。
weaintgotnohistory.sbnation.com
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日曜日(3/4のマン・シティ戦、0-1)の醜態から数日が経ち、私の困惑は増していく一方だ。何が間違っていたかを特定するにも、何から始めようかって感じだ。
ラインナップや戦術?想像の欠如?大多数の選手のエネルギー不足?そもそも場違いだった?目に見えるリーダーシップを持った選手が継続して欠けていたこと?バカみたいな交代策?アザールの明らかな、そして理解できる落胆か?肩をすくめるようなコンテのインタビューか?
何かを文にするってのは大事なことだ。
チェルシーはまだヨーロッパに残っているし(当時)、FAカップにも残ってる。
来季のチャンピオンズリーグ出場だって可能だ。このシーズンをひっくり返すことはできる。
だが、監督がシティが完全に上だと認め、立ち向かうことではなく、相手を止め、その状況を持続させることしか出来なかったことは、間違いなく分岐点、そして15ヶ月前のシティ訪問からの明らかな後退という汚点となるだろう。
オンターゲット0、僅かなカウンター、そしてチームのベストプレイヤー(アザール)が不本意にもぎこちないクリアからのターゲットマンとして働いた。
チェルシーは6年前、ヨーロッパフットボールの最上位の夕食の席に座っていた。
私たちは現在、トイレとサービスリフト近くに席を割り当てられ、枕から首を伸ばしてライバルを見上げている中、他の強豪たちは、最上位の席をよじ登っているか、あるいはあと2つってとこまできている。
国内でさえ、俺たちは*Quaglinoよりも*Nando'sに向かっているように見える。これは15/16のモウリーニョ下においての崩壊よりもどうももっと深刻、もっと構造的な問題だと見ている。
最終的に良い監督たち(モウリーニョ2度、コンテ、アンチェロッティ)が権限を与えられず、疎外され、究極的には追い出されることになれば、勿論クラブは自分たちに問いかけなければならない。”彼らが原因か、それとも私たちか?”と。
クラブの上層部がどれだけ自己反省や自己分析をしているのか私には分からないが、今回はそれをすべき時かもしれない。
アブラモビッチのチアリーダーたちは当然のように彼がどれだけのものをクラブにもたらしたかをリストに書き連ねるだろうし、それは間違いなく正しい。
彼は私たちを夢にも思わなかったレベルまで引き上げた。
チャンピオンズリーグ優勝、ヨーロッパリーグ優勝、5度のプレミアリーグ優勝。数々の国内カップ優勝。
しかし、明らかなのは、私たちはここ数シーズン、ヨーロッパでベストのチームからは衰退した。そして何が心配かというと、もし金が選手じゃなくてスタジアムに投資されれば、その衰退は更に進んでいくのみだ。
全くもってあり得ることだがもしチェルシーがチャンピオンズリーグ出場権を逃せば、明らかに、そして本当に、トップクラスの監督や選手たちがここに来ない可能性がある。たとえ金を払ってもだ。
私たちの最高のプレーヤー(エンゴロ・カンテとエデン・アザール)は、混乱を以て今何が起きているかを注視しなければならない。
私たちのチームは不十分なのだ。
もし最高のレベルで戦いたければ、最高のレベルの選手を買わなければならない。
最近獲得した選手を見れば、もはや我々はそうではないことが分かる。
監督の公の場での補強に対しての不満は、彼を助けることになったとは言い難く、そして私は彼が夏にはいなくなるのではないかと不安な気持ちにある。
しかし、彼は全くもって正当に、カンテ以来トップクラスの質を伴った補強をしてもらえなかったことについて主張することが出来る。
イングランドにおけるフットボールの覇権争いは循環的な傾向にある。 リヴァプールファン、アーセナルファン、トッテナムファンに聞いてみればいい。
心の中で、それぞれ28、14、57年間もの間、リーグタイトルから見放されると考えていたか。過去にはユナイテッドも25年、シティが43年間リーグを取れていなかったし、エヴァトンも30年だ。
今ではチェルシーが唯一だが、15年前にはどのチームがロンドン唯一のヨーロッパのコンペティションの勝者になってもおかしくなかった。
10年に渡ってイングランドフットボールを支配することはないことは歴史が証明している。勿論、シティにも言えることだ。
彼らは自滅するか、あるいはその他のクラブ、もしくは他クラブらが十分な野心、才能、経済力を持ってその支配に対して応答する。
私が恐れているのは、チェルシーが完全にチームとして、ピッチ上での野心という面おいて出遅れ、そのトップクラブのいかなる衰退をも利用することさえできなくなるのではないか、ということだ。
この問題には1970年代とどうにも避けようがない類似点が存在する。
FAカップとUEFAカップウィナーズカップで成功を収めた後、チェルシーの経営陣は当時ヨーロッパ1となる60,000席、オールシートスタジアム(当時は立ち見が主)建設という壮大な計画を打ち出した。
1972年夏、当時の会長ブライアン・ミアーズによる明らかなかつ公の「監督のデイブ・セクストンは新しい選手を獲得するために必要な資金全てを手に出来る」という発言はすぐに覆され、その資金は新イーストスタンド建設へと投入されることになったのだ。
新スタジアムの建設資金がどう賄われるかが公にされることはなかった。中産階級や家族にも入りやすいスタジアムにするなんて言葉は、ただの言葉。甘い誘惑でしかなかった。
1972年、層の薄さに悩まされたセクストン監督の解決法はといえば、ウィンガーを獲得するのではなく、チームの最も巧いミッドフィールダーであるアラン・ハドソンをウィンガーに移すことだった。彼のダイレクトプレー、ゲームを変えるパスを失う代償に、だ。
このコンバート策は、ハドソンの不満、混乱、そして究極的には、彼の放出の原因となってしまった。
当時のもう一人の最大のタレントであるチェルシーのレジェンド、ピーター・オスグッドに至っては、ミッドフィールダーで起用される運びとなり、代替要員の少なさにより1度だけであるがセンターバックでも起用された。
聞いたような話だなって?そりゃあんたも自分が持っているチームの限られた最高の選手を妥協するより、システムをその最高の選手に合わせるよね。
1970年代、ブライアン・ミアーズ会長はチェルシーを覆いかぶさる様々な問題によって激しい批判に晒されたが、誰も彼のクラブ愛を疑うことはなかった。一つ言うまでもない間違いがあったのは、チームが深刻な再建、補強の必要があったのにも拘らず、クラブの全精力をスタジアムに傾けてしまったこと。
その次に何が起こったかというと、その代償ともいえる劇的な転落、衰退だ。ピッチの中でも、外でも、だ。
主に経営陣のコントロールできない理由で新イーストスタンド建設は大幅に遅れ、それはクラブを破産に追い込むほどだった。
残りのスタジアム改築は起こることもなく、チームは衰退、最高の選手達は売却され、セクストンはクビ、そして最後には降格は必然だった。
今ではチェルシーが降格や破産をするなんてことを言い出すような人はいないが、失敗は相対的な概念だ。
週末旅行者、セルフィースティックを振り回す奴ら、ハーフ&ハーフマフラーを着ている奴ら。
このうち何人がリーグタイトルにも届かず、チャンピオンズリーグの後半戦にも薦めないチームに魅力を感じるか、というのは興味深い問いだが、チャンピオンズリーグ出場権を不本意な臨時スタジアムで目指すようなことがあれば、それは痛々しい光景になるだろう。
私が気付いたのは、かなりの数の試合に行くサポーター達が、スタジアムのコンセプトが開始された時よりも、新スタジアムに対してあまり熱心ではないと感じている。
建設の遅れ、建設する4年間についての悲惨な見通し、栄光の日々が終わりを迎える(少なくとも一時的には)こと、全てが要因だ。
チェルシーは今分岐点にいる。
相対的なピッチ上の失敗が続くというリスクを冒してまでスタジアムを建設するか、野心的とは言えないスタジアムプロジェクトを進めつつ、チームに資金を投入するか。
答えることは難しい。
サポーターには、オーナーに対しチームとスタジアム両方に莫大な投資を期待する神のような権利はない。
問題は、前者(チームに対する投資)をしなければ、後者は別に必要なくなってくるかもしれないということだ。
誰もスタンフォード・ブリッジが*クラッパムジャンクションと*ヴォクソール間の通りのような豪華でも不活発なものになることは見たくない。
とても魅力的に映るが、人が入っているとは程遠い。
私の意見か?チームが最初に来るべきだ。計画されているように、私も再開発はほぼ間違いなく起こることだと理解しているが、今こそが、クラブ上層部陣にとってどっしりと構え、短期、中期、長期的な優先順位を決定し、それに準じて行動する時期だと思う。
それがコストとスケールの面で再開発の規模を縮小し、キャパシティが48-52,000辺りになるのなら、それならそれでいい。
6年後には私たちは19000人(再開発後60000人収容ー現在41000人収容)もの人を新規に惹きつけるため、とても強力なチームが必要になる。
私を含む多くのサポーターたちは、チームがどれほどいいかにかかわらず、魅力的でもないゲームをするチームが再開発されたスタンフォード・ブリッジで60,000枚ものチケットを売ることは不可能に近いと思っているが、まぁ勿論、サポーターは決定を下せる立場にはない。
これは私たちが再開発中の4年間で永久に失う可能性のあるサポート、そしてスタジアム視点、特に私たちがスタジアムを離れている間に相対的に見て苦戦した場合を考慮に入れていない。
アブラモビッチの巨額の富がイングランドフットボールに革命を起こしたのだから、チェルシーサポーターは他クラブがこの2018年に経済力があることについて不満を口にしてはならない。
あぁ、なるほど、だからトッテナム、アーセナルに並び、シティ、リヴァプールを超えるレベルのキャパシティをクラブが得たがっている。その狙いは試合日における収入を増やしたいんだ、と。
この分析は正しい。純粋な観客からの試合日の収入がクラブの主要な収入だったころは、の話だが。
今はTVマネーとコマーシャル収入によって、話は違ってきている。
テレビマネーの急騰は、停滞、もしくは国内において僅か減少する可能性があるだけで、前回2回の取引より更に高騰している。
海外の放映権はどんどん増えていくし、商業的にはグローバルな拡大とは、スポンサー、商業両面においての搾取の機会であることを意味する。
これらの収入の急上昇は、試合当日の収入の重要性を減少させた。
再開発に関して言えば、非常に簡単にまとめると19,000人がシーズンのホームゲーム25試合に更なる上乗せされるとなると、合計で最大475,000人分の収入が得られることになる。
もしその席が£120(足される19000席は完全に市場を意識したものなので、完全に非現実的であるとは言えない)なら、シーズンにつき£5700万の収入上乗せとなる。
スタジアム再開発費用(これはポピュラーな再開発費用の引用だが)£10億に対してだ。
つまり新スタジアム再開発費用の回収はすぐに行えるものではなく、これは勿論、全てのゲームが売り切れ、金持ちをうまく引き込めるほどチームが魅力的で、チームの結果に関わらず毎週観戦に来てくれるような感情的なコミットメントを持たない人々を前提とするものだ。
そしてこういった観光客や栄光だけを求める人を引き入れるものとは?成功したチームだ。
じゃあ、どうやってその成功したチームを創造し、維持するか?投資だ。今まで私たちがそうしてきたように。
ごゆっくり。
*Quaglino・・・ロンドンの高級レストラン
Nando`s・・・UKのファミレス。アドナン・ヤヌザイが彼女をここに連れてきて怒りを買ってしまったことでも有名
クラッパムジャンクション・・・ロンドンの地名
ヴォクソール・・・ロンドンの地名
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~個人的な考察~
私も大分現在のクラブには悲観的な見方をしているので、訳していて結構くるものがありましたね。
はっきり言って結構マズいと思ってます。
何しろ不確定要素が多すぎてどっちにも転がる可能性がある状況だけど、間違いなくスタジアム再開発はする。
補強の質も低くなる一方。
ただ、現時点では確実なことはこれぐらいしか言えないのが実情。
個人的に望むのはやはり長期的な展望。
監督が2年おきに変わるようじゃ、長期的な展望なんて立てられるはずがない。
しかも2年前に10位という地獄を既に味わっているという。
ボードが変わらなければ、はっきり言ってこのクラブに未来はない。
そんな目でクラブを眺めています。
極論言えば、今季4位でも5位でも大差はない。
補強するつもりがないのなら、来る選手に大差はないでしょうからね。
今夏のチェルシーの動きというのは、今後数年、10年レベルを左右する可能性があると思います。
ここまで読んで下さりありがとうございました。